一人の≪男≫がいた。21世紀に入って間もないことだった。
≪男≫は、朝から晩まで来る日も来る日も、たった一つのテーマに取組んだ。
【どんな肌質の女性にも喜んで貰える、
世界のどこにもないスキンケア商品を創る!】
≪男≫の言う事は無謀だった。
「お肌を改善する多くの成分は、有効であると同時に敏感な肌質の方にとってはお肌をシゲキします。この刺激を抑えなければダメです。良いものは、自然で、無害な成分でつくるべきです。そんな成分をたくさん集めて、すべての肌質の方を満足させる新しい製品を創ると決めました。」
≪男≫の許に製造会社が次々と名乗りを上げた。
「難しい仕事ですが、やりがいのある仕事です。例えできたとしても、ものすごく高額になることが予想されます。」
大冒険どころか、不可能への挑戦と言えた…
案の定、挑戦者は次々に姿を消していった。
試作品は山のように作られた。けれど、モニターが満足するモノはできなかった。
最後の一社も言った。
「できません!」
「できます!あなた方は私の夢に賛同して、
ここまでやってきてくれたではありませんか!」
しかし、結局撤退してしまいました。
「やっぱりダメか・・・」
さすがの≪男≫も諦めかけた時だった。
「実正(みしょう)」という会社が名乗り出た。
『是非、私たちのところへ任せて下さい!』
試作回数は3回程度が常識だ。しかし、早くも5回を超えた。
通常、開発にかかる月日の6ヶ月が過ぎたある日、「実正」の社長が言った。
『やはり、この仕事は断ろう…
何度も何度も試作を繰り返すばかりで、
まるで商品を誕生させる意図がないようだ。』
『確かにそうですね…』
実正の営業担当者、角谷(かどや)は挫折感と敗北感に襲われていた。
『お断りしよう…』
その時だった!
ありえない出来事を角谷は目の当たりにした。
普通、どんなモニタリングをしても、気が付くはずのない0.1%の成分の違いを
ボーテが用意していたモニターたちは難なく言い当てたのだ。
『コレが良いですね♪』
『こんな事があるなんてッ・・・!!?し、信じられない・・・』
角谷は脱帽した。
『ボーテ』のスタッフ、モニターたちの真剣な眼差しは、あの≪男≫の眼差しと同じだった。
『ボーテ』の信念、
【喜ばれるものを世に贈りたい】と
『実正』の信念、
【嘘のない、良いモノ創りを】とが一致した瞬間だった。
『商品を誕生させるまで、必ずやり遂げましょう!』
仕切り直しだ。『実正』は燃えた。
試作10回目、既に1年が経過していた。≪男≫はまたも無理難題を投げかけていた。
『えッ!?これにも入れるんですか??』
『たとえ、洗い流すまでのわずかな時間でも、肌につける以上は、良い成分を入れてあげたい!』
『だから、クレンジングジェルや、リキッドソープにも、ビタミンC誘導体を入れてもらいたい!』
と言い張った。もちろん、注文はまだ終わらない。
『何ですって!!?まだ入れるのですか??』
化粧品に入れる有効成分は通常3〜5品目。 入れれば入れるほど、刺激が増えます!
それなのに、15品目も・・・
『そう、入れられるだけ入れて下さい!これ以上入れても、変わらないところまで!』
『えっ!?そんなことすれば、価格も物凄いことになってしまいますよ!?』
『そんなことは気にしなくても良い!』
「おかしいんじゃないか?この人は・・・」 フトよぎる。けれど、角谷は≪男≫を信じた。男の夢に共感し、頑張った!その情熱は再び『実正』全社を呑み込んだ。
試作は遂に20回を超えていた。
最後に求められたものは、優れた成分を溶かし込む水だった。
角谷には自信があった!水探しの矛先はヨーロッパへと向けられた。
フランス、ドイツ…そして遂に、バーニ・デラ・ポレッタ(イタリアのボローニャ地方)のミネラル成分をたくさん含んだ温泉水に白羽の矢を立てた。
ローマ時代から人々の間で、療養地として知られていた温泉地施設には医師や専門家が常駐し、保険まで効き、健康指導、各種の病気の治療に当たっている。さらに、肌の新陳代謝を促し、健康で美しい肌をつくるとして、全身美容にも使われている。
しかし、基礎化粧品に導入するというのは日本で初めての事だった。
試作33回、その日、遂にそれは完成した。
モニター500人が遂に叫んだ!
『これよ!』
不可能という山の頂きに立った瞬間だった。
3年の年月が過ぎていた。
角谷が言う
『業界では、さしみの法則があります。<良い>という人が30%、<普通>という人が40%、<良くない>が30% これで、商品としては十分です。ところが、『ボーテ』は95%の人が良い!と答えました。ありえないことです。これはこの製品がそれだけ凄いという証拠です!』
角谷も、その≪男≫も溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
『実正』の社長は≪男≫に言った。
「やりましたね」
「ありがとう。でも、あなたとあなたの会社の全員と私たちみんなで創ったのじゃないですか。角谷さんにもご苦労かけました。」
「ただ、ただ嬉しいです。」
「美しいものを創る。 その一心です。やり方ではありません。それが全てを解決します。」
清々しかった。
『ポレッタテルメ』の誕生は終点ではなかった。冒険はさらに続いたのだ。
≪男≫は言った。
『ポレッタテルメ95%の評価は素晴らしい!けれど、あとの5%にも応えないと!』
「100%なんて絶対ありえません!だから肌別というものがあるんですよ!?」
『「絶対」などということはありません。』
「それだけじゃありません。この5%の方たちとは、敏感肌の方たちのことです。その方たちにとって、体調のわずかな変化や、季節によって大きく肌が反応することは、あなたもご存知の通りです。」
『さらに低刺激なモノを、炎症が起きないようなものを創って、そんな方たちの悩みに応えてあげませんか?』
『諦めている方たちだっています。
でも、諦める事はないって教えてあげましょう!』
2年が過ぎた頃、何回目かの暗礁に乗り上げた。
お肌の問題解消にはほど遠く、しかも使用感も良くない…
基材から変えなければならない。そんな時、あるモニターからの一言がズシリと響いた。
【私の肌はキレイにならないのですか・・・?】
衝撃の一言だった。。。
「やり直そう」
「もう一度ゼロから、世に出てお客さまの結果がでるまでやり遂げよう!」
わずか5%、しかし、その壁は例えようもなく高かった…
気温や湿度、体調などで肌が潤いを無くし外部からの刺激に敏感になるのを何によって防ぎ、改善し、維持できるのだろうか。
世に既に出ている優れた敏感肌ケア製品の上をいき、さらにどこにもない美容効果の高いケア製品を作り出すには一体どうすればいいか…
3年が費やされ、そして、とうとう探し求めていたものと出逢うことができた。
それは『フラーレン』という物質だった。
1985年、ハロルド・クロトー、リチャード・スモーリー、そしてロバート・カールによって発見され、この3人はその発見によって、1996年にノーベル化学賞を受賞した。
フラーレンはいくつもの特許に守られているが、東日本では『実正』だけが独占的に扱うことができた。
美の女神が本物と本物を引き合わせたのだ。
そして、完成した製品は『リバリア』と名付けられた。
≪男≫の声が今日も聞こえる。
『自分の夢はお客さまの夢、美しいものを創り続けよう!
実現するまでは決して諦めてはいけない!』